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他人物売買の制限 |
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解説 |
宅地建物取引業者は、その者の所有に属さない宅地建物について自らが売主となって売買契約]]]]を締結することを原則として禁止されている(宅地建物取引業法33条の2)。
民法上は他人物売買は可能であり(民法560条)、その場合、売主はその権利を取得して買主に移転すれば売主としての債務を履行したことになるが、取得できなかったときは、買主は契約の解除や損害賠償の請求をなしうる。
しかしながら、現実の宅地建物の取引にあっては、宅地建物取引業者が他人の所有する物件を売買の対象としながら、後になってその所有権を取得できないため、買主である一般消費者が不測の損害を被ることがある。このような場合、売買契約の解除や損害賠償の請求によっても買主側が救済されないことが多く、さらに、このような事案を刑法の詐欺罪で処罰するためには、欺罔(ぎもう)の事実や財物の騙取(へんしゅ)の事実のほか、違法性や故意などの立証をしなければならないが、これらの十分な立証が難しい場合が多い。
そこで、このような事故を防止するため、宅地建物取引業者に対して、自己の所有に属さない物件を売却することを原則として禁止しているのである。
ただし、他人物売買の禁止は一般消費者の保護がその趣旨であり、現実に行われている円滑な商取引まで阻害する趣旨ではないので、この原則に対して適用除外が認められている(同法33条の2ただし書き)。
宅地建物取引業法33条の2第1号では「宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約]]]](予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているとき」と「宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき。」を適用除外としている。
例えば、甲所有の物件について、宅建業者乙との間に売買契約が締結されているような場合には、宅建業者乙はその物件を一般消費者丙に売却する契約を締結してもよい。このような場合には乙が甲から物件を取得できなくなって乙・丙間の契約]]]]が履行できなくなるといった蓋然性が低く、また、宅建業者乙も一般消費者である丙に他人の物件を売りつけるという悪質な動機は持っていないと考えられるからである。
ここで「 宅地又は建物を取得する契約」には「予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く」としている。予約を含めているのは、本契約の場合と同様予約も契約の一種で法的拘束力があるからである。これに対して停止条件付契約は適用除外とはされていない。これは条件が成就するかどうか不確実であるからである。
また、「宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき。」とは下記の場合である(宅地建物取引業法施行規則15条の6)。
- 当該宅地が都市計画法 の規定により当該宅地建物取引業者が開発許可を受けた開発行為又は開発行為に関する工事に係るものであって、かつ、公共施設(同法4条14項に規定する公共施設をいう)の用に供されている土地で国又は地方公共団体が所有するものである場合において、当該開発許可に係る開発行為又は開発行為に関する工事の進捗の状況からみて、当該宅地について同法40条1項 の規定の適用を受けることが確実と認められるとき。
- 当該宅地が新住宅市街地開発法2条1項に規定する新住宅市街地開発事業で当該宅地建物取引業者が施行するものに係るものであって、かつ、公共施設(同条5項に規定する公共施設をいう)の用に供されている土地で国又は地方公共団体が所有するものである場合において、当該新住宅市街地開発事業の進捗の状況からみて、当該宅地について同法29条1項の規定の適用を受けることが確実と認められるとき。
- 当該宅地が土地区画整理法100条の2の規定により土地区画整理事業の施行者の管理する土地又は大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法83条の規定において準用する土地区画整理法100条の2の規定により住宅街区整備事業の施行者の管理する土地(以下「保留地予定地」という)である場合において、当該宅地建物取引業者が、当該土地区画整理事業又は当該住宅街区整備事業に係る換地処分の公告の日の翌日に当該施行者が取得する当該保留地予定地である宅地を当該施行者から取得する契約を締結しているとき。
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