本来弁済を受ける人が何らかの理由で受け取らない場合に、供託所にその金銭を供託して、弁済した事実を明らかにしておくためになされる手続きである。
次のいずれかに該当すれば弁済供託をすることができる。
- 債権者が受け取りを拒んだ場合(受領拒否)。
- 債権者が受け取らないことが明白である場合(不受領意思明確)。
- 正確な債権者が分からず、誰に弁済したらよいのか不明の場合(債権者不確知)。
- 債権者が受領できない状態のため弁済ができない場合(受領不能)。
代表的な例として、家賃(地代)等の弁済供託を挙げられる。
この場合、供託所に提出する家賃相当額は、従来の家賃と同額かそれ以上であることが必要となり、家賃相当額を供託しながら賃貸人との家賃交渉を行い、結果として従来の家賃より高い金額で決着した場合、差額および遅延損害金を合計した額を賃貸人に支払わなければならない。
逆に、従来の家賃よりも高額の家賃相当額を供託していた場合に、従来の家賃でよいとの決着がついた場合には、払い過ぎた金額については、取り戻すことができる。
留意しなければならないのは、家賃を供託する前に原則として賃貸人には弁済の提供をしなければならないということである。現実に賃貸人のもとまで家賃を持っていって断られた後でなければ、供託はできない。
ただし、賃貸人があらかじめ値上げ後の家賃でなければ受け取らないと明言している場合や、支払いの形態が、賃貸人が集金に来ることになっている場合には、口頭の提供で足りる。
また、賃貸人が明け渡し請求訴訟を提起している場合には、口頭の提供さえ不要となり、直接供託しても差し支えない。 |