定期借家のメリット・デメリット

こんにちは。鷲谷です。

今回は言葉だけは聞いた事がある方もおられると思いますが、
「定期借家」について、お話しします。

定期借家制度は2000年3月1日に施行されて13年半が経過していますが、居住用の賃貸契約での普及率は5%以下で「ほとんど使われていない」状態です。オーナーにとってメリットがないから普及しないのか、誤解によるものなのか、検証してみたいと思います。

まず、オーナーにとってのデメリットを考えてみましょう。
【部屋が決まりにくい(?)】
定期借家物件は借主から敬遠されるので「決まりにく」と言われます。その理由は「決められた期間しか住めない」からです。借主にとって、これは大きな問題ですね。日本では借家人の権利が強く守られていますが、定期借家は期間とともに借家権が消滅してしまうので、借主が「住み続けたい」と言っても、貸主が了解しない限りは退去しなければなりません。
たとえば同じような物件があって、片方は普通借家で更新が保証されています。もう一方は定期借家で一定期間しか住めないとしたら、普通借家の方が「決まりやすい」はずです。もっともな理屈ですね。
しかし考えてみれば、この借主の不安は契約期間の長短によるものでしょう。極端な話「100年でも住んでください」という条件なら、定期でも普通でも変わりはありません。「2年間だけ」と言われたら借主は敬遠するでしょうし、4年でも「ちょっと」と思うでしょうが、8年や10年以上ならば問題のないレベルです。「定期借家ですが再契約に応じるので、いつまでも住んでください」と言えば、この「決められた期間しか住めない」問題は消滅するのではないでしょうか。
もうひとつ、「定期借家物件の紹介に消極的」という業者が少なからず存在する、という現実があります。理由は「決まりにくいから紹介しても効率が悪い」からだと思われます。やはりオーナーの物件を、地域の不動産業者が積極的にお客様に紹介する、という状態が望ましいですね。少しでも敬遠する業者が存在するのはマイナスでしょう。そして、業者が敬遠する理由はもうひとつあります。

【契約手続きが面倒】
定期借家契約には、専用の契約書を用意する必要があります。
一般の契約書を用いることも可能なのですが、条項の訂正や削除や加筆が必要になるので神経を使います。内容に不備があると定期借家と認められない場合もあるからです。つまり、契約が約束通りに解除されなくなるリスクがあるのです。もうひとつ、「貸主からの説明書」という、定期借家だけに必要な書類が存在します。内容は契約書に書かれていることと重複していますが、法律で定められた必須の書類となっています。
今年の最高裁判決で、この書類の不備のために「定期借家ではない」とされた事例がありましたので要注意なのです。
これらの書類を用意するのを嫌う不動産業者もいます。
さらに2年ごとに再契約する場合は、そのたびに契約書を取り交わす必要があります。2年ごとに合意更新を行っている地域(関東や京滋地区)なら手間は同じなのですが、自動更新の地域では大きな負担になります。
定期借家のオーナー側のデメリットは、基本的にこの2つに集約されるでしょう。

次はオーナー側のメリットを考えてみましょう。
【入居者管理がしやすい(不良借主を排除できる)】
もし、常習的に家賃が遅れたり、3ヶ月以上も滞納したり、周りに迷惑をかけるようなルール破りをする借主がいたら、オーナーは「出て行ってもらいたい」と思うはずです。でも、そのような不良入居者がいても、普通借家においては簡単に契約解除ができません。
家賃の滞納は少なくとも3ヶ月以上でないと裁判所は取り合ってくれませんし、裁判になっても判決で契約解除を認めてもらわなければなりません。判決を得て強制執行するまでに数ヶ月もかかりますから、オーナーの負担する費用も莫大になります。
家賃を1ヶ月でも払わないなら、オーナーが望めば「すぐにでも」退室してもらいたいと思うのですが、借家権が強く守られた日本では不可能なのです。騒音で迷惑をかける借主も、共同生活のルールを平気で破る借主も、契約を解除するのは容易ではありません。オーナーが「更新しない」と対抗しても、「法定更新」という制度が借主をガードしています。
では定期借家なら簡単か?というと、そうではありません。ただ、契約期間に限りがあるので「再契約に応じない」ことが可能です。
定期借家には「法定更新」はないので、その時点で契約を打ち切ることが出来るのです。もし裁判に発展した場合でも、明け渡し判決をとるのは容易と言われています。
そんな理由から不良入居者の排除が、普通借家よりは容易になっています。たとえば、こんな予防策をとることもできます。家賃の支払いや素行に不安を感じる借主に対して、最初は短期の契約で様子をみて、問題がなければ次は2年間で再契約する、という方法です。このように不良入居者を排除することができれば、優良な借主にとっては「暮らしやすい物件」となりますから、定期借家は借主にもメリットがある、と考えることもできます。

定期借家のオーナー側のメリットは、基本的にこの1つに集約されるでしょう。

定期借家がオーナーに与えるメリットとデメリットを比べてみました。もし「入居者管理がしやすい」というメリットを優先させて、定期借家の活用で稼働率と収益アップを目指すなら、2つのデメリットを「少しでも」小さくする工夫を講じる必要があります。
「決められた期間しか住めない」という借主の不満によるデメリットは、「再契約を約束した定期借家契約」にすれば和らぐと思われます。悪質な滞納やルール破りがあったときだけ「再契約しない」という契約は有効と言われているのです。
「他の借主に迷惑をかける不良入居者が排除されて暮らしやすい物件になる」という借主のメリットを理解してもらう努力も効果が
あるでしょう。
「契約手続きが面倒」という不動産業者によるデメリットは、説明して理解を求めるより他にありません。

定期借家契約は賃貸経営にとって、メリットが勝るかデメリットが勝つかを考えてみましたが、定期借家の特徴を十分に理解したうえで運営することにより、オーナーの収益増に役立つのではないでしょうか。

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